【はじめてのコーチング】コーチングって何① 世の中のトップ層がコーチングを活用するわけ

ネットやビジネス書でよく目にするようになったコーチング。とはいえ「なんか海外で流行っているらしい」「マネージャーやリーダーなど立場が上の人が学ぶもの?」という印象を持っている人も多く、身近なイメージはまだあまりありません。そんな「コーチング」を「トップ層」と呼ばれる人たちが注目しているのか、一方でどんな人にとっても「コーチング」というプロセスが必要で、身近なものであるのかを解説していきます。

コーチングとは一体どんなものなのでしょう?コーチングの入門書として有名な『コーチングが人を活かす』ではこのように書かれています。

コーチングはあくまでも、問いを2人の間に置き、一緒に探索しながら、相手の発見をうながしていくというアプローチをとります。

『新 コーチングが人を活かす』鈴木 義幸・著より

どうやら基本的な「コーチング」は、2者で行われるようですね。

対話する2人は一般的に「コーチ」と「クライアント」と呼ばれます。

何か打開策を見つけたいと思っている「クライアント」に対して、「コーチ」は問いかけをします。「クライアント」はそれに答えながら、考えていること、気づいたことなどを返答していきます。このコミュニケーションを続けることそのものが「コーチング」です。最初はこの「問い」と「答え」を繰り返していきますが、時に「答え」ているうちに「問い」を持つこともあり、それを「クライアント」が「コーチ」に返すときもあります。コーチングが一方的な問答ではなく、相互のコミュニケーションであるという点が、「コーチング」の仕組みをシンプルに説明できない理由ともなっているのでしょう。しかし、問題解決のために問いと答えを相互に繰り返し続けるということは実は日常的にも行われていることであり、普段のコミュニケーションもまた「コーチング」的な要素があると言えるのかもしれません。

サービスとしての「コーチング」では、クライアントがコーチにお金を支払い、コーチはクライアントの自身の中にある解決策を問いかけを通じて引き出す場を作ります。コーチはあくまで「問う」立場なので、カウンセラーや教師、医師のように、「解決策」を提示する人ではありません。ここで「お金を払うのに解決策を教えてくれないの?」といった疑問も沸くかと思います。その背景には、現代人が抱えている問題はプロから与えられる「解決策」では真の解決に至らなくなったという社会の動きがあります。

コーチングの活用が進んだ理由

コーチングに関するニュースをネットや雑誌でみていると、次々に新しいコーチングサービスが生まれていることがわかります。なぜ今こんなにも「コーチング」が注目を集め、世の中で必要とされているのでしょうか。

グローバル化や科学技術の発展に伴い、情報の量と伝達スピードはめざましく上がっています。「ググれ」ば日常で生まれる些細な問いは解決できますし、何か事件が起きれば秒単位でデマも含めた新しい情報が嫌でも手元に届きます。

仕事という観点では、職業は選ぶものではなく作り出すものへと変化しています。既存の枠組みの「職」がAIなどの技術にとってかわられる一方で、それまでなかったような肩書きであっても、プレゼン力や企画力があれば、お金を稼げる時代となったのです。「好きなことで、生きていく」のキャッチコピーで有名なYoutuberという職業がその代表格でもありましたが、「職種」が生まれては消える時代が到来しました。

ライフスタイルもそうです。「結婚して、家を建てて、老いては子に面倒をみてもらう」というライフプランは当たり前のものではなくなりました。衣食住全てのトレンドが十数年単位でなく、はやいものでは月単位で変わってしまうのです。

この変化をまとめるならば、「当たり前」や「絶対」がなくなったということになります。

この「絶対」の喪失に人一倍敏感だったのが、経営者・マネージャーといった社会における「トップ層」達でした。強さの絶対値が存在しない世界では「経営者」「マネージャー」といった肩書がなんのパワーも持たなくなってしまったのです。会社を設立するハードルは下がり「社長」を名乗れる人たちがたくさん現れました。従業員数が多いことはそれだけ支出もお多いということになり、市況の波が荒い中ではスモールビジネスの方が、ローリスクハイリターンといえる業界もあります。

いつ「下克上」が起こってもおかしくない中で「絶対的な法則(メソッド)」と呼ばれるものが意味を持たなくなりました。専門家にお金を出してもらったアドバイスも明日には無意味かもしれません。結局は自分自身が納得できる答えにのっとって行動するしかないのです。だからこそ、自分の中から「解決策」を見出す、コーチングが必要とされるようになったのです。

次回はさらに、他の「解決型サービス」とコーチングの違いを深堀りしていきます。