【もしかして毒親?】毒親になりやすい「昭和父」これがあてはまったら要注意

毒親問題は、「母娘」の問題として取り上げられることが多いですが、「家族」という枠組みで捉えたとき、その中での「父親」の担う役割についても軽視することはできません。なぜ今「毒親」が問題となってきたのか、今回はその背景にある「昭和の父親像」に焦点を当てていきます。

昭和の父親像

家庭の支配者としてえばる夫をさす「亭主関白」、昭和の男は家庭でこの言葉だけですんだとされる「風呂、飯、寝る」など、「昭和」の父親像を表す言葉はたくさんあります。社会がめまぐるしく変化する中で、父親はどんと構えて動じないことを期待されていました。これだけ聞くと、「強さ」や「頼り甲斐」といったポジティブな印象も生まれますが、その一方で、家庭の変化も気にかけない「鈍感さ」が許されてきました。戦争前までは「地域コミュニティ」という単位で子育てがされていました。

しかし、戦中そして戦後の復興の中で「男手」が必要とされ、都市では「労働」を担う男性と「子育て」を担う女性という性的役割の分担意識が生まれていったのです。「労働」が称賛され、「24時間戦えますか」といったコピーや、島耕作シリーズがサラリーマンのバイブルとなるなど、働くことの美徳が持て囃されるようになりました。社会での労働が持て囃される一方で、家事労働が日の目をみることはあまりなく、「仕事が忙しい」ことを子育てに参画しない「言い訳」とする父親も増えました。

最近、SNSでは「島耕作は実はクズ」といった内容の投稿が話題を集めていますが、会社で活躍し、昇進も遂げる一方で「仕事のために家庭を犠牲にする」姿に非難が集まったようです。実際に漫画を読んでみると、家にほとんど帰ってこず、部下と不倫関係になる、海外で恋人を作ってしまうなどがまるで「武勇伝」のように書かれています。島耕作には娘の奈美がいますが、両親の離婚に振り回されており、自分を認めてくれない父の元に料理を作りに行くなど、愛情に飢えているような表現もあります。彼女もまた「毒親育ち」といえるのかもしれません。

昭和父が抱えた問題

人の欲求は「無いと飢え(物足りなさ)を感じる欲求」と「満たされるとより幸せになり成長などを感じられる欲求」がありますが、生理的欲求や安全欲求の次に「社会的欲求(所属の欲求)」があり、これは欠乏していると不安や苦痛を感じるものです。家庭を顧みないことを社会からも容認されて生きてきた父親たちは、家族というコミュニティにおける「所属の欲求」が満たされなくなり、その不満は大きく分けて2つの形で「歪み」をもたらすこととなりました。

1つ目は「自分の存在を家庭内で知らしめる」行動です。存在感がないことに対して、力や態度で解決しようというものです。「ちゃぶだいをひっくり返す頑固オヤジ」などは、昭和の父親像としてよくあるものですが、周囲の家族へ理解を示さず「恐怖」で支配しようとしたのです。そういった父親は特に母親に権威を振りかざすことが多く、家庭内で何か問題が起きると母親を罵倒して責めることもします。そんな両親の姿に、子どもはおびえるようになり、特に幼少期のそういったストレスは脳に大きなダメージを与えることも近年の研究で明らかになっています。「お父さんに怒られないために」と父親以外の連帯感が強くなることもあり、父親は余計に家庭内で孤立、所属の欲求が満たされず、さらに行動が激化していくという負のスパイラルが生まれます。

もう片方が「家庭から逃げ出す」行動です。仕事を言い訳に使うことで、家族に問題が起きた時にも母親任せにして、自分は問題から目を背けます。また、子どもから愛情を求められても、それに応えずに自分の趣味などに逃げてしまいます。母親の「毒」が強い場合、子どもが父親にヘルプサインを出しても「家のことは母親に任せている」として無視します。結果、子どもは「愛情不足」を感じることにもなります。そういった父親の元で育った娘の場合は成人後、愛情不足を安易な異性との交友で満たそうとし、不倫などといった行動に走ることもあります。このタイプの父親は、あまり社会的非難を浴びることがないため、息子の場合はそういった父親の性質を当たり前のものとしてとらえてしまい、息子自身が結婚してから家庭内で存在感がなくなるといった連鎖につながることもあるようです。

「昭和父」にありがちな言動

昭和父は、現役から離れていくと、所属するコミュニティが「家庭」しかなくなる人も多く、その欲求不満を下記のような形で満たそうとします。自分の父親が当てはまっていないか確認してみましょう。

  • 外面はいいが、家庭内では母親に対してえらそうにしている
  • 子どもの仕事のやり方や向き合い方に「自分たちの頃は〜」と口出ししてくる
  • 子どもの社会での功績に対して「張り合う」ようなことをいう
  • 家庭内で些細な失敗をすると他のひとの責任にしたり、逆ギレしたりする

あてはまるものが1つでもあれば、「毒親育ち」「毒父育ち」の可能性があります。定年後、問題がさらに大きくなることもある「毒父」のこと、今考えてみませんか。


参考文献

高橋リエ(2019)『気づけない毒親』株式会社PHP研究所

加藤諦三(2017)『子供にしがみつく心理』毎日新聞出版